底が浅いの?
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先ずはこの記事。
「飯炊き3年、握り8年」
お鮨という料理は食べやすく切った魚をお酢のご飯にのせるという至極シンプルな食べ物であることは疑いようもない事です。
しかし、実際に職人になるには、これほどの年月がかかると言われているそうです。
鮨職人の世界には、ライバルを増やさないためになかなか握りの技術を教えないという慣習もあると聞きます。
確かに、皿洗いや飯炊きばかりしていては握りの技術なんて身につかない。
いろいろな意味ですっ飛ばしていきなり握りを教えてもらえればきっと時間はかなり短縮されるでしょう。
ラーメンなどは合理化が進んでいるせいか、修行期間はそれほど長くなくても開業できると言われています。
修行期間はそこそこでもやり方次第で成功できるというわけです。
楽器で言えば、ギターです。
3つ4つコードを覚えれば、かなりの曲数を歌うことが出来ます。
ピアノやバイオリンのように小さい時からやる必要はなく、いつでもスタートできる。
高校の時の友達には、初めて3ヶ月でライブをやった強者もいました。
とにかく間口が広いんです。
では我が楽器サックスではどうか。
まずよく言われていることですが、音を出すだけでもそれなりの苦労を伴います。
吹奏楽のような合奏ならともかく、一人でメロディーの演奏を人前でまともに、となると数年はかかるでしょう。
それに加えてアドリブが入ってくると、更に10年くらいの時間が必要だと思います。
ジャーナリストのマルコム・グラッドウェル氏によれば、人は何かのスキルを身につけるには1万時間の習熟が必要だといいます。
一日3時間で10年。
これが必要なのだと。
どんなジャンルでも、ある一定のレベルに達するのにかかる時間には差があるが、極めるという観点で見れば1万時間はかかると考えても良さそうです。
ある一定のレベルに達する時間が短いものにはたくさんの人が挑戦します。
例えば歌うこと。
音痴の人はその矯正に時間が掛かるかも知れませんが、普通は歌を楽しむことにハードルはほとんどありません。
カラオケに行ったことがない人は少ないでしょう。
結構上手い人もそれなりにいます。
でも、本当に歌うための声を持っている人というのはものすごく少ない。
これはもう才能としか言いようが無いのですが、人が聴いてうっとりとしてしまう様な声っていうのがやはりあるんです。
僕は幸いにも出会ったことがあります。
これはこの1万時間でもどうすることも出来ない。
間口が広いとこのことにも気が付き易いわけです。(気付いていないとすれば、まだ出会ってないのです。)
以前のエントリーでも書いた、ヘタウマなジャンル、パンクの様な音楽もこの1万時間では解決できない問題があります。
初期衝動が全てに優先する。
表現したいという強い気持ちが無ければ、技術がいくらあっても意味は無いとする態度。
表現したいという欲求が無ければパンク・ロッカーだと名乗っては本来いけないんです。
最初の鮨職人にもどると、今は学校でその技術を効率的に教えてくれるシステムがあって、実際に数年の修行で開業に至る人も出ているそうです。
ある一定のところまではサクッと行けるようになった。
師匠や兄弟子のいじわるでなかなか握りの技術を教えてもらえなかった様な時代とは全く異なります。
でもこの後、店が成功するかどうかは別の話です。
技術以外のアイデアも必要でしょう。
店のインテリアをどうするとか、立地条件とか、価格設定とか、その店独自のメニューとか…
間口の広いジャンルはたくさんあります。
昨今の和太鼓ブームもそうでしょう。
誰でもシャッターさえ切れれば作品になり得るデジカメの台頭もそうでしょう。
それらのジャンルにもそれらに真摯に向かい1万時間を使って極めてきた人たちが存在します。
彼らの中には、あまりにもお気楽な態度でそれらに接する人に辟易としている人がいるかもしれません。
間口が狭い楽器で良かったと僕自身は心の何処かで思っています。