Chasin' the Sound 5th

サックス(フルート)/ サウンド・デザイナー 栗原晋太郎のオフィシャルブログ

カラフルなモノクロ写真~音楽家レイ・ハラカミ逝く~

音楽家のレイハラカミさんが享年40歳という若さで他界されました。 最近有名人が亡くなるニュースが続いていますが、ハラカミさんが亡くなった知らせは、僕には特別に響きました。 人のアンテナに直接触れるような音楽を作ることの出来る、まれな存在。 解き明かすことは出来ないこの気持ちよさの理由。 僕は、彼の特殊な音楽制作環境を知る前に彼の音楽に魅了されました。 カラフルなモノクロ写真というイメージ。 ローランドSC-88PROオンリーで紡ぎあげたという信じられないサウンド。 音楽制作はやればやるほどに機材が増えていく。 新製品は当然たくさんの新しいアイデアが投入され、音の質的向上はもちろん、音楽制作に直接影響を与えるようなインターフェイスを獲得していく。 この進化の功罪のひとつに、音楽の大量生産化と言う問題がある。 音楽理論的な知識などなくても、アイデアと才能さえあれば誰でも「良い音楽」が作れる。 逆に言えば、アイデアと才能に恵まれなかった音楽も大量に生まれてしまった。 ハラカミさんはなぜか機材を増やさなかった。 それはこだわりからそうしたのではなく、結果的に、特に必要を感じなかったからなんだろうと思う。 聴けば聴くほどに味わい深い音。 なぜこんなことが可能なのか。 SC-88PROって、単なるDTM入門音源でしょ? アイデアだけはどんな時代でも人間から発信される。 どれだけ機材の進化があっても、ここは譲れない譲らない。 かつてジョン・ケージは、サイコロを振ってその出た目で音程やデュレーションを決め音楽を作っていた。 しかし、サイコロが音楽を紡いだんじゃない。 このアイデアが重要だったんだということ。 アイデアの枯渇を新しい機材で埋めてるんじゃないの? 僕は打ちのめされました。 このすばらしい音楽は、誰でも知ってる入門音源から発せられているんだ。 日本の宝が今眠りについた。 今宵はUSTでレイ・ハラカミ追悼番組を見ながら、気持ちよく眠りにつきたいと思います。
LustLust
(2005/05/25)
Rei Harakami

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