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ドラマ「カルテット」と映画「LA LA LAND」

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 宮台真司さんの映画評( ネタバレ注意!宮台さんが語る【ラ・ラ・ランド】 - YouTube )はネタバレが危険なそうなのであれなんですが、ここでのお話はとても面白い。

 話題の映画「LA LA LAND」には表現者へのメッセージが込められているという。本当はアートをやりたいけど、現実には聴衆はみなエンターテイメントを望んでいる。エンターテイメントによって、非道い現実を忘れさせてくれるという事が、ミュージカル映画の機能としてあるんだとすれば、現代においてそれを表現するのはなかなかに難しい。人生のある場面で、ああしておけば今とは違った生活になったのではないかという仮想。それを選択することは現実問題として難しかったという人々への忘却の提供。LA LA LANDのラストは人生をやり直すシミュレーションを物凄い密度でみせる。有り得たはずの未来をみせる。でもそれは夢の中でのデ・キ・ゴ・ト。

 
 一方、話題のドラマ「カルテット」は、様々なバックグラウンドを持つ4人の大人が音楽(クラシックの弦楽四重奏)を軸に集まり、それぞれの人生を昇華させていく物語。素晴らしい脚本で、毎回本当に楽しみだった。
 最終回では、ある意味のファンからの手紙で、才能のないあなた達が音楽を続けていく意味を問われる。「LA LA LAND」と同様、表現者へのメッセージとも受け取れる。
 
 音楽におけるポップスとは、構造は単純であり、メッセージに深みを持たせない方向に舵を切る。分かりにくさは、ポップスの敵でしかないからだ。しかし、人の心とはそんなに分かりやすくはない。その意味で、万人にとって普遍的なことは実はそれほど多くないんじゃないか。生活に疲れた人々は、そんな事を考えない…。
 
 「カルテット」の主人公は、カルテットのメンバーが夢を趣味に出来れば幸せになれるとの発言を遮り、それについての意見は述べず、大きなホールでのコンサートをやろうとを申し出る。メンバーはその決定以降、また再び音楽に集中しはじめる。
 答えなんて一つに限らない。ハッキリさせることの無意味さ。今そこにある現実だけが真実なんでしょう。だからミュージシャンは音をだす。何十年もの練習で得られたそれぞれに最高の音(一瞬で消えてしまうあまりにも儚い音という媒体)を頼りに、生きる。
 
 劇中のカルテットの名前「ドーナツホール」というのは絶妙なネーミングだ。ドーナツの穴を欠損として捉えた上で、欠損がなければドーナツ足り得ないという事実を芸術家の姿に重ねているんでしょう。
 
 僕はこの2つの物語から、いろいろ学んだ気がしています。それは僕自身が表現者でありミュージシャンであるからなのかもしれません。