Chasin' the Sound 5th

サックス(フルート)/ サウンド・デザイナー 栗原晋太郎のオフィシャルブログ

焼肉ジャズ

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映画やドラマで使われる音楽には、そのシーンを盛り上げる為の機能があります。
悲しいシーンなら悲しく聞こえやすい音楽を用意します。
CMやラジオ番組などで使われる短いジングルと呼ばれる音楽にも対象を記憶に残してもらうという機能があります。
初めからそういう機能のある音楽として作られていますから、音楽そのものが残らなくても問題ないのでしょう。

焼き肉屋や、居酒屋などで雰囲気だけを求めて流れてくるジャズにも機能があります。
というか、これに関しては機能が後からくっつけられました。
ほとんどの人はこのシチュエーションでのジャズを全く聞いていません。
ただ流れていくだけです。
僕が知っている曲がそんな場でかかって、仮に説明しようとしてもそんなに興味はもってもらえません。
十把一絡げ。
新たに付与された機能だけに意味があるのです。

この様なジャズを僕は焼肉ジャズと呼んでいます。
この流れは一世を風靡した焼肉チェーンが最初にやったんじゃないでしょうか。
全然和風の空間に突然有線経由のジャズが流れる。
最初に僕が気付いた時には、きっとジャズが好きな店長さんがかけているんだろうと思い、今かかっているのは何の曲ですか?などと質問したこともありました。
様々なお店でたずねて、誰もなにも知らないんだと分かったときに僕は愕然としました。

求められていたのは雰囲気だけ。
夜の、大人の、お洒落な…

スーパーでかかる音楽はもっとひどい。
(たぶん、)無音ではさみしいという理由のみで、なんだか得体の知れないJフュージョンみたいなものがかかっている。
歌が入っていると、買い物の邪魔なんでしょう。
こういった音楽は歌の入っていないインストものがほとんどで、もはや雰囲気も必要ない。

ただ、無音を避けるというためだけの機能を持った音楽。

クラシック音楽が全盛だった時代には音楽は常に特別なものでした。
なにしろ、生演奏以外にそれを聴く手段がなかったのですから。
人々は音楽を、それを作ったり演奏したりする人々を尊敬したでしょう。

でも今は、音楽はその機能の方が大切になりつつある。
時には握手券のおまけになったり、α波を出すためだったり、情操教育のため妊婦さんがお腹にヘッドホンをして聞かせたり、おいしい野菜やお肉をつくるために動物や植物に聞かせたり…etc.

時々わけがわからなくなります。
時々ね。