Chasin' the Sound 5th

サックス(フルート)/ サウンド・デザイナー 栗原晋太郎のオフィシャルブログ

7月17日です。コルトレーンの命日です。

f:id:saxman220:20150717150220j:plain

自分の葬式でかけて欲しいアルバムのナンバー1はジョン・コルトレーンの「至上の愛」です。
割りと葬式というセレモニーでもいい感じにマッチするアルバムです。

こうやってApple Music越しにコルトレーンを聴くのもなんだか面白い。
今はモンクとのライブ盤、「At Carnegie Hall」を聴きながらこれを書いています。
あっ、今無料期間中だし、是非聴いてみてください。
演奏のクオリティーがほんとにやばい。
元来ジャズのコンボ演奏はホール・コンサートには向いていない気がするんだけどこのライブは本当にスゴイ。
2005年に発掘された録音だそうで、まだまだこんなのが出て来て欲しいなぁ。

CDが売れなくなって、音楽業界はどんどん縮小していると言われます。
その大きな原因は、音楽を聴くためのメディアの進化にある。
さかのぼれば、クラシック音楽は当時譜面でしか記録を残せなかったので、人々に伝播させるにはライブしかなかった。
そして、レコードの時代になってラジオでも音楽が流れるようになった。
モダン・ジャズはそのへんが歴史の始まりです。
そして、CDの時代が来てランダムアクセス可能になり、簡単に好きな曲だけを聴くようになりました。
さらには、iPodの登場で音楽はデータで楽しむ時代に突入。
今では携帯電話が進化して、音楽鑑賞専用のマシンを持つ人のほうが少数派。

とにかく便利になりました。

これはコルトレーンには辛い時代です。
コルトレーンって、疲れるんですよ。聴くだけで。
最初にあげた「至上の愛」なんて最たるもので、全部聴くと3キロくらい痩せるんじゃないかってくらい。(もちろんそんなダイエット効果はありません)
スマホからイヤホン出して、気軽にポチってなんでも聴けちゃうけど、誰も疲れる様な音楽聴きたくないでしょ?
なんというか、格闘するような気持ちでスピーカーに向かわないとやられちゃう感じがするんですよね。

本当に聴くなら、まず体調を整えて、空腹でも満腹でもない状態にします。
最高にセッティングされたオーディオ機器を前に、先ずは針をクリーニング。
大きなジャケットから慎重に盤面を取り出し、更にクリーニング。
回転数を慎重に合わせて針を落とす。
すぐさまスピーカーの真ん中に鎮座し、深呼吸。かすかなスクラッチ・ノイズに耳を澄ます。
ここからが真剣勝負。一音も聴き逃してはいけません…


と、こうやって聴かれた音楽は本当に成仏します。

なにかしながらでは本来音楽は聴けないのだと思います。
そんな面倒臭いなら誰も聴かないよね~。
今書いた例は極端にしても、コルトレーンの魅力はそのくらいやって聴かないと理解できない種類のものなのかもしれません。

全然ポップじゃない。 手軽じゃなさすぎる。

僕は一時期、コルトレーンのアドリブを研究していました。
繰り返し聴いて、譜面に起こし実際にテナーサックスで吹いて確かめました。
そんなことはミュージシャンじゃないとしないのは当たり前です。
でもそうやってなんとか食らいついてきた音楽には特別な思いが宿ります。

なんかね、思いだすんですよね。
そうやって見出した自分が誇らしくなってたというか、スゴイのはすべてコルトレーンなのに自分が一回り大きくなったような、そんな気がしてた…。
特に誰かと共感しなくても全然いいというか。
今みんな共感に飢えてるでしょ?でもボッチでもいいんですよ。
なんだか懐かしくなってきました。

今日7月17日コルトレーンの命日です。
静かにコルトレーンを爆音で聞いて過ごします。

※冒頭の写真は一番好きなLive at the Village Vanguard。このブログのタイトルは3曲目のChasin' the Traneからもらいました。

 

至上の愛

至上の愛