Chasin' the Sound 5th

サックス(フルート)/ サウンド・デザイナー 栗原晋太郎のオフィシャルブログ

マウスピースをめぐる旅

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サックスのマウスピースとは、通称唄口(うたくち)といって口で直接くわえるパーツのことです。
あまり知られていないですが、サックスにおいて最も音に影響するパーツの順番とは、以下のようになります。

リード→マウスピース→楽器

最も影響が少ないのが楽器というのは少し意外な気もしますが、事実です。
要は、体に近ければ近いほど音への影響がおおきいのです。
ちなみにリードは唇が直接触れるものであり、音を生成する役割を持っています。さらに、これは消耗品です。
マウスピースはそのリードを支える屋台骨です。
その内部構造は音の傾向を決める重要な役割を持っています。

定期的に訪れるマウスピースをめぐる旅。
現在使用中のマウスピースに疑問を持ってしまう(飽きてしまう)定期的に訪れる時期を、僕はこう呼んでいます。
時には新しいモノを手に入れることもありますが、ほとんどが徒労に終わります。

本当に思うんですが、消耗品は仕方ないとしても、マウスピースや楽器はその場で良し悪しを判断するのは不可能なんじゃないかという問題です。
まとまった時間、それと付き合うことでようやく見えてくる事が多すぎる。リードとの相性もあるし、取り組んでいる楽曲にもよる。

クラシックだけをやっていた頃は楽でした。
全員が判で押したように同じマウスピース、楽器、リードを使っていましたから何も考える必要はなかった。例えば吹奏楽のような演奏形態では音的な個性は邪魔でさえあった。

楽器に関しては、自分で育てるという感覚もあります。初めは抜けが悪いくらいの楽器でも、少しずつ自分色に染まってくる。初めから抜けた楽器はむしろダメという人もいる。つまりは、楽器屋さんで出会った段階では大して気に入っていないものに大枚をはたいて買うわけです。

こうなると、楽器なんてなんでもいい。

最近ではメンテナンスの技術力が最も重要なファクターになっている。リペアに行きやすい場所にお店はあるのか?いつも間違いない仕事をしてくれるのか?どのくらいこちらの事情を受け入れてくれるのか?
きちんとした楽器なら楽器はなんでもいい。その後の方がずっと重要なのです。

マウスピースの件。
僕は今回エフェクターを大胆に取り入れた音楽に挑戦しました。でかい会場で、抜ける音と強いアタックがどうしても必要。僕はずっと長く使っている(何に浮気しても必ず戻ってしまう)マウスピースをあきらめ、ずっと前にバンドをやっていたときに使っていた小汚いマウスピースを引っ張り出してきました。
このマウスピースでの音作りに一週間程かけました。相性のいいリードを探して、奏法も少し変えました。

これで僕が得た物はこっちも有りだなという程度の変化だったのかもしれません。実際、人には気付かれにくい事だったりしますし…。
それでもいいんです。一つのステージをより充実させるための探求としては悪くない。

まだまだ、僕の旅は続いていきます。